著者
田畑 恒平 植田 康孝
雑誌
Informatio : 江戸川大学の情報教育と環境
巻号頁・発行日
vol.13, 2016-03-15

最近話題となることが増えている「ドローン」は、無人飛行機(UAV= Uninhabited Aerial Vehicle)の呼称である。ドローンは、1950 年代に活躍した名女優マリリン・モンローがドローンのプロペラを取り付ける作業をしていた軍工場の広報誌に写真が掲載されたことをきっかけにハリウッドデビューを果たすなど、エンタテインメント分野との親和性が歴史上、非常に高い領域である。われわれ人間が暮らしているのは「3 次元」の世界であるが、現実には「高さ」方向の展開にはかなり制約があり、自由度はあまり得られて来なかった。コンサートやライブ会場において、アーティストは宙に浮く訳ではなく、あくまでクレーンやゴンドラが動く範囲内でしか自由に移動することができなかった。そのためエンタテインメント分野の行動様式も「2.5 次元」に留まっていたが、小型化され高度なフライトコントローラーを備えたドローンの出現により、本当の意味での「3次元」的な動きが可能になった。日本では、ラグビー五郎丸歩選手が所属する「ヤマハ発動機」が、農薬散布目的で市場をリードしてきたが、2013 年に大ヒットしたNHK の朝の連続ドラマ「あまちゃん」のオープニングで、海辺にいる主人公・天野アキ(能年玲奈)を空から追い掛ける映像にドローンが使用されたことで、急に注目されるようになった。また、近年では、グラミー賞を受賞した米国の4 人組ロックバンド「OK Go」のミュージックビデオ「OK Go: I Won't Let You Down」や、Perfume の「NHK 紅白歌合戦」におけるライブ演出など、映像効果や舞台演出として用いられるようになり、「3 次元」の世界を楽しんでもらえる環境が整備されてきた。3D 映画「STAND BY ME ドラエもん」では、スマートフォンで操作することによって上下左右360 度で視点を変えられ、実際にタケコプターで空を飛んでいるかのような体験をできるサイト「のび太と空中散歩」がインターネット上に公開された。映画においても、「007 スカイフォール」「トランスフォーマー」「アイアンマン3」などの作品でドローンが撮影に使用されるようになっている。テーマパークのディズニーランドは、複数のドローンでつり下げられた大きな操り人形を動かす新たなアトラクションの特許を取得済みであり、今後導入することを計画している。 一昔前に枕詞として頻繁に用いられた「放送と通信の融合」は最近では死語になった。スマートフォンの普及により誰もが自ら情報発信できるようになった現在、メディアに拘っているのはメディアの内側に閉じ籠もった人達だけであり、もはや「放送」や「インターネット」といったメディアの区別は意味を持たない時代になっている。しかし、そういう時代であればこそ、メディアに囚われない「差別的コンテンツ」が比較優位性を獲得できる。植田・木内・西条・田畑[2015]は、「エンタインメント」と「インフォメーション」を融合させた上位レイヤー概念として、「インフォテインメント(Infotainnment)」を定義したが、ドローン(無人飛行機)は音楽ライブやテーマパークなどエンタテインメントを「2.5次元」から「3次元」へと拡張してくれる存在であり、「インフォテインメント」を実現する「比較優位ツール」と言える。江戸川大学マス・コミュニケーション学科エンタテインメントコースは、平成27 年度において、「ドローン(無人飛行機)」を用いた教育を導入し、新たな時代へのエンタテインメント企画や演出面で教育効果を得たため、本稿に事例紹介する。
著者
田畑 恒平 植田 康孝
雑誌
Informatio : 江戸川大学の情報教育と環境
巻号頁・発行日
vol.13, 2016-03-15

ネット動画、CG 映像、アニメ、ゲーム、メディアアート、映画、テレビなど、現代のデジタル社会の中で、映像文化が占める位置づけはますます重要且つ緊密になっている。このような状況の中で、ウェアラブル端末の登場は、「現実空間」に位置する人間と、ビッグデータとして「ヴァーチャル空間」に蓄積される映像との関係を変えてしまう革命である。ウェアラブル端末によって実現する「AR 空間」や「VR 空間」は、新たなプラットフォームになる可能性がある。Vine からInstagram などのSNS、ゲーム実況からウェアラブル端末などのゲームは、「映像に何が映っているか」ではなく、「映像でいかにコミュニケーションするか」を重要とする、「映像コミュニケーション」時代の到来を示す。「グーグル・グラス」や「アップル・ウォッチ」のようなウェアラブル端末が普及した近未来においては、映像を撮影する条件は常に「ヴァーチャル空間」に記録されるようになる。我々が映像を見る時、更には映像を撮る時、「ヴァーチャル空間」は無意識のうちに表出される人間の特徴を余さず捉え記録する。「プレイステーションVR」向け「サマー・レッスン」では、キャラクターからも見られているという「緊張感」を常にプレイヤーに与える。プレイヤーが「ヴァーチャル空間」を覗く時、「ヴァーチャル空間」はプレイヤーに様々な映像を提示するが、プレイヤーは引き換えに自分の「反応」を「ヴァーチャル空間」に提供しなければならない。ヘッド・マウント・ディスプレイを装着し、周囲を見渡すと、頭の向きを変える行為もデータとして「ヴァーチャル空間」に与え分析されることになる。アルバート・アインシュタインは100 年前に発表した「一般性相対理論」で、「空間」と「時間」は連続体(「時空」と呼んだ)であると論じたが、2016 年2 月11 日、「時空のさざ波」である「重力波」の直接観測が報告された。ドローンが「3 次元」世界の「高さ」方向の制約を開放するものであるとしたら、ウェアラブル端末は縦、横、高さの「3次元」に「時間」軸を加え、「3次元→4次元」を実現するものである。 江戸川大学マス・コミュニケーション学科エンタテインメントコースは、「ウェアラブル端末」を学生が近未来の方向性を考える上で適した課題であるとの認識の下、平成27年度の演習・実習に導入した。「現実空間」と「ヴァーチャル空間」の境目(マジックサークル)は崩れ始め、かつては夢物語であった4次元的な製品やサービスが実現する。「現実」と「ヴァーチャル」を織り交ぜて、面白いモノ、便利なモノを生み出す。「今までにない時代が見えてくる、違った4 次元世界が見えてくる」ようになり、社会や経済を刷新する仕事に携わるすべての人々が持つべき視点であり、「現実空間」に閉じて生きることはもはや許されない時代となる。今までの情報革命は、あくまでもモニターの向こう側、つまり情報空間の中でのみ生活が便利になった程度だった。AR、VR の普及で今後は、情報が現実さえも凌ぐ社会になる。米IDC の調査によれば、2020年には500億台の機器がネットに接続し、2013年(44兆バイト)から10 倍の440 兆バイトのビッグデータが作られる。ICT技術の進歩により、2045 年には「ヴァーチャル空間」(コンピュータの能力)が「現実空間」(人類の能力)を凌ぐという説がある。このような世の中は、プライバシー問題、セキュリティ問題を深刻にするという懸念も根強いが、社会に出る若者に必要な知識を身に付けさせることが「大学」の責務であるとすれば、ICT の力を前向きに捉え使いこなす「英知」を育成することが、文部科学省が国立大学に教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の統廃合や社会的要請の高い分野への転換を迫る、「人文系の大学で教えている学問のほとんどがもはや時代遅れになっている」という指摘を受けるなど昨今厳しい批判に晒されている文系学部が目指すべき「大学教育」となる。
著者
田畑 恒平 植田 康孝
雑誌
Informatio : 江戸川大学の情報教育と環境
巻号頁・発行日
vol.13, 2016-03-15

「インフォテインメント」とは、「エンタインメント」と「インフォメーション」を融合させた上位レイヤー概念であるが、田畑・植田[2015] は「プロジェクション・マッピング」を用いた「インフォテインメント」教育の実践事例を紹介した。プロジェクション・マッピングは、「映像投影」を意味する「プロジェクション(Projection)」と「配置し合わせる」を意味する「マッピング(Mapping)」の2 つの単語から成る合成語である。「リアル」(実体)と「ヴァーチャル」(映像)のシンクロナイズを行い、対象の情報や機能を拡張する(建物に命を吹き込む)ことを表すが、音楽ライブやテーマパークなどエンタテインメントとの親和性が非常に高い領域であり、「インフォテインメント」の代表事例と言える。たとえば、ダウンロードやサブスクリプションなど音楽配信によるデジタル化が急速に進展する音楽分野においては、ライブやイベントの重要性が増していることに伴い、観客が従来にない付加価値や会場の一体感を味合う仕掛けが求められており、「プロジェクション・マッピング」が有効な手法になり得る可能性がある。 音楽や映像配信の低価格化で音楽を「聴く」だけでなく、「見る」「体験する」価値を求める消費者が増えている。多くのデジタル財は限界生産費用がゼロであり、固定費を無視すれば再生産を無限に行うことが可能になる。市場は「完全競争」に近付き、市場メカニズムは先鋭化して、資源の流動性が高まり長期の均衡点は短期の均衡点に接近する。情報の不完全さがもたらしてきた「超過利潤」は消え、「先行者利得」が小さくなると、排他的な「体験価値」が人々のウェルビーイング(幸福)向上に貢献するようになる。凝った演出は一部のアーティストに限定されていたが、演出コストの低下で市場の裾野は広がりつつある。音楽ライブ・コンサートの国内市場は2014 年に2,721 億円と初めて音楽ソフトを上回った。ライブの演出費用は一般に全予算の1 ~ 2 割と言われるが、ファンを拡げるために演出に費用を掛けるアーティストは増えており、市場は今後も膨らむ見通しである。このような市場環境を踏まえて、導入教育を行った平成26 年度に続き平成27 年度においても、「プロジェクション・マッピング」を用いた教育を継続し、基礎段階から応用段階へと高次化することにより、新たな時代へのエンタテインメント企画や演出面での教育の可能性を得たため、本稿は田畑・植田[2015] からの改善点を中心に事例紹介する。「プロジェクション・マッピング」は物質ではない。光やネットワークであるため、建物を、都市を、自然を傷つけることなく「アート空間」に変換できる。「プロジェクション・マッピング」と「アート」が融合すれば、人類の知覚がより豊かになる「近未来」がやって来る。
著者
松尾 由美
雑誌
Informatio : 江戸川大学の情報教育と環境
巻号頁・発行日
vol.14, 2017-03-31

本研究では、現在、大きな社会問題となっている保育士不足を解消するために、早期離職を防ぐためのキャリア教育には何が必要か考察した。これまで、保育者養成校等で行われてきたキャリア教育の多くは現場等での体験が中心であり、就職後の研修も職場で起こる様々な問題に取り組む力を育てるものがほとんどであるように見える。今後、技能や経験に伴う処遇改善制度が採り入れられ、キャリアアップの仕組みが構築された際には、自身のキャリアをどう形成していくのか考える力は、長く保育士として働き続けるためには不可欠な能力であると考えられる。しかし、キャリア教育で育成すべき4 つの能力のうちキャリアプランニング能力を体系的に育てる、保育士を対象にした手法は見当たらない。そこで、本研究ではキャリアプランニング能力を育てるために不可欠だと考えられる筋道のある問題解決過程を身に着けることを目的とするシミュレーションゲームを提案した。